首・肩・腕・背中の症状
肩こり
鍼灸による治療
肩こりの治療
身体の状態によって肩こりに対する処置も変わります。単純に使いすぎによる筋疲労からくる肩こりに対しては、筋緊張、圧痛、硬結に刺鍼して血流改善、筋緊張の緩和を図ります。慢性的なこりに対してはパルス<通電療法>や、温灸も効果的です。また最初にアキレス腱の緊張をほぐすと効果的でもあります。特にハイヒール性肩こりには顕著な効果が期待できます。
自律神経の乱れからくる筋緊張がベースにある場合は、刺鍼もこっている部分だけでなく、膝下や前腕、腹部など全身にツボを取ることで、症状の改善を図っていきます。
例えば次りょうと次りょうの周囲には、排尿中枢と排便中枢があるので、これらの経穴を刺激すると骨盤内にある臓器の機能が高まります。従って、内臓の自律神経に起因する肩こりには特に効果的です。肩こりには、肩のみの治療ではなく、全身を対象とした治療の方がより効果的ということを御理解下さい。
痛みを軽減する経穴への刺激も必要で、特に委中と承山に対する刺激は欠かすことができません。委中は肩、背中、腰などすべての部位の痛みに効果的な経穴です。承山は第二の心臓といわれるふくらはぎの中心線に位置していて承山とその周囲をほぐすと肩のこりも自然にほぐれる場合が多いのです。
主に治療に使われる経穴は
- 頸肩背部:天柱、風池、大椎、肩井、肩外兪、肺兪、至陽、隔兪
- 手足:血海、三陰交、太衝、陽陵泉
などが挙げられます。
肩こりの原因
肩こりというのは症状の一つで傷病名ではありません。また一言で肩こりと言っても様々な種類があります。以下に肩こりと主な症状を記しましたので、ご自分の症状と照らし合わせて一度ご相談ください。
肩やその周囲に原因があるもの
肩関節周囲炎(四十、五十肩) | 肩の関節を動かすと痛みがでる。 |
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胸郭出口症候群 | 手のしびれ、冷感がある。 |
頚肩腕症候群 | 後頭部痛、手のしびれがある。 |
背骨に原因があるもの
変形性頚椎症 | 後頭部痛、手のしびれ、筋力が低下する。 |
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頚椎椎間板ヘルニア | 手のしびれ、手の感覚・動きが鈍くなる。 |
頚椎後縦靱帯骨化症 | 身体を動かす時にぎこちない動きになる。 |
頚椎ねんざなどの外傷 | 様々な症状が出現する。 |
内臓などの病気によるもの
肺ガン | 体重減少、血たんが出る。 |
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高血圧、低血圧 | 不眠、のぼせがある。 |
狭心症、心筋梗塞 | 胸を締め付ける痛みがある。 |
眼精疲労 | 頭痛、かすみ目がある。 |
更年期障害 | 顔のほてり、のぼせ、動悸がある。 |
貧血 | ふらふらする、意識が遠くなる。 |
その他
自律神経失調症 | 様々な症状が出現する。 |
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うつ病 | 脱力感、倦怠感がある。 |
寒さ | 冷房、温度差による冷え。精神的緊張、睡眠不足によるものなどがある。 |
自分でできる肩こり診断
今の状態は冷やした方が良い(急性期)のか、温めた方が良い(慢性期)のかをチェックしてください。急性 | 慢性 | |
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熱感(痛みの箇所が他の場所と比べて温かい) | ある | ない |
痛み | 一部分ズキズキ痛む | 全体的痛いというよりは重だるい |
安静時痛(座っていても痛む) | 常にある | ない・時々ある |
運動痛(歩きだし・階段の上り降り・等) | 常にある | ない・時々ある |
夜間痛(痛みで目が覚める) | 常にある | ない・時々ある |
しびれ | 常にある | ない・時々ある |
以上の項目で急性と慢性で当てはまる項目が多いのはどちらですか?
急性のみ、または急性が多く当てはまった方は、早めに一度受診されることをお勧めします。慢性のみ当てはまった方は、
をご参考ください。
こんな肩こりは要注意
- 同じ場所のこりや痛みが長く続いている
- 寝ていても痛い
- 痛みがだんだん強くなる
- 痛みやしびれが指の方まで及んでいる
- 腕に力が入らない
- 手の感覚が鈍くなった
- 胸痛や腹痛、背中の痛みを伴う
- 肩こりの手当てをしても治らない
以上に思い当たる節がある方はご相談ください。
当院では鍼による治療も行っております。
肩こり外来
多くの人が肩こりを訴えますが、明確な定義はありません。しいていえば、何らかの要因で筋肉の緊張状態が長く続いた後に起こる、頸や肩、背部がこわばったような不快感を総称したものといえるでしょうか。
日常的な動作に起因するだけに、慢性的な肩こりを訴える人は少なくありません。「たかが肩こり」と言えないのにはわけがあります。
一つはそのつらさ。ひどくなると頭痛、ひいては吐き気を催すほどになります。また、単なる筋疲労が原因のものから頚椎疾患や耳鼻科、眼科、歯科さらには内科疾患まであらゆる病気が奥に潜んでいる可能性があります。肩が痛いから肩こりと単純に済ますことはできず、他の症状との関連も視野に入れた治療が必要です。
実際、肩こりの大半は、自律神経のバランスが崩れたことに起因している…と言っても決して過言ではありません。
たとえば睡眠不足や疲労の蓄積、ストレスの蓄積などによって、自律神経のバランスが崩れて消化器系の内臓の機能が低下すると、胃下垂、胃もたれ、便秘などの諸症状を引き起こします。また、よく食物を噛まずに飲み込むと、胃腸での消化が妨げられ、内臓の自律神経の動きが悪くなるケースもあります。
実は人間の内臓は筋膜や靱帯により頸や肩の骨格にぶら下がった構造をしています。そのため胃腸の中に消化しきれない食物が大量に留まると、その重みは肩にまで負担をかけるのです。肩が常に腹部の余分な荷物を抱える形になり、筋肉が緊張をし続けることになるのです。しかも、仮に量的には少量であっても、一日中肩からカバンをかけているように、長時間持続的にかかる負荷なので、肩にとっては負担が大きいのです。
また、不良姿勢もこのような内臓に関連した肩こりを引き起こす原因になることがあります。例えば身体を前屈ぎみにした姿勢を長時間続けるデスクワークの人は、その姿勢によって胃腸が持続的に圧迫されるため、次第に胃腸が鬱血(血液が澱んでしまう)して、内臓体性反射として肩こりを引き起こします。胃腸のトラブルを脳が勘違いをして肩に異常があるかのように感じてしまうのです。
もちろん、肩こりの中には、内臓の自律神経や内臓性の鬱血と連結しないものもあります。頚椎症など頚椎の異常に原因のあるケースも珍しくないし、手や腕の使いすぎなど単純に筋肉の問題だといえるケースもあります。精神的なストレス、姿勢不良、手のオーバーユースなどの原因が複合的に働いて発症するケースもあります。意外なところでは、ハイヒールを履く機会が多い女性に好発するハイヒール性の肩こりがあります。ハイヒールを履いている時、足は常に底屈(つま先立ち)を強いられているため、アキレス腱が緊張し、それが背中の緊張につながり、最終的に肩こりの誘因になる場合が多いのである。
東洋医学的に見ても原因の分類は多岐にわたります。代表的なものは「肝血の不足」「血虚」といわれるもので、文字通り血(栄養)の巡りが悪い状態といえるでしょう。漢方では肝は筋肉と最も関連のある臓腑です。「肝陽の亢進」によるこりは高血圧症の方によくみられます。熱の性質と関係が深く、口苦、目の充血、顔のほてり等を伴うことも多いのが特徴です。
寒さや冷えに元をたどる肩こりもあります。「風寒の邪」に頸肩を巡る経脈が侵襲された状態で、営衛(身体を守るエネルギー)の流れが悪くなることで筋のこりが起こると考えます。
マッサージによる治療
肩こりの指圧・マッサージでの治療法
肩こりを解消するためには、マッサージ法・ツボの指圧・ストレッチが効果的です。
マッサージ法・ツボの指圧・ストレッチをすることで、肩周りの血液循環が改善され、こり固まってしまっていた筋肉に酸素や栄養分が活き届き、痛みを改善させます。
指圧法とは
指圧(しあつ)とは、疾病の予防・治療を目的に、母指を中心として四指・手掌のみを使用し、全身に定められたツボと呼ばれる指圧点を押す手技療法です。
マッサージ法とは
直接皮膚に求心的に施術することにより、主に静脈系血液循環の改善や、リンパ循環の改善を目的にした、手技療法です。
指圧・マッサージは、薬や機械を用いず人の手により行われる施術です。手技としては、筋肉や神経、皮膚などを目的として、押す、もむ、さする、つかむ、こねる、震わす、たたくなどがあります。
指圧・マッサージには、これらの手技を用いて各組織に刺激を与え、筋肉や神経の疲労回復を図り、それらの緊張をほぐし、身体各組織の働きを活発にさせるという効果があります。
また疾病の治療という点だけではなく、健康維持や美容、あるいは精神的リラックスという面からも大きな効果が期待できますので、若い方の指圧・マッサージのファンが激増しています。
指圧・マッサージの効果としては、だいたい次のようなものが上げられます。
- 筋肉の緊張をやわらげる
- 痛みやしびれなどを鎮静化する
- 内臓の働きを調節する
- 栄養を供給し、皮膚に潤いを与える
- 血液、リンパ液、気の流れを潤滑にする
- 神経や内分泌の働きを活発にする
- 免疫力を高める
肩こりの原因と治療
芝浦治療院では細部の筋肉まで意識し、細やかな施術を行っています。
肩甲骨周辺の筋肉は首、背中、腰などと広い範囲で関連性を持っています。つまり肩甲骨の動きが悪くなり、筋肉が硬くなるということは広範囲にわたり悪影響を与えてしまうということになります。
また肩こりの原因となる筋肉は、そのほとんどが肩甲骨に付着しています。そのため肩甲骨に付着している肩こりに関連する筋肉を一つ一つほぐしていき、血流をあげて筋肉をゆるめていくことが肩こりを解消するためのポイントになります。
- 肩こりは、肩上部の筋肉の厚みがある部分の圧痛から始まります。
- 肩こりは、進行すると圧痛点やこりを感じる部位が拡大します。
- 肩こりは、筋肉の持続的緊張により圧痛部位が拡大し、深層筋にまで影響します。
肩こりは、日本人に非常に多い症状です。自覚のある症状として女性では1位、男性では2位に「肩こり」は上げられています。
肩こりが酷くなると頭痛や腕のしびれ、腕の動かしづらさ、集中力の低下、無気力、倦怠感、不眠・・・など様々な症状を伴い、日常生活に支障をきたします。
肩こりの症状に対する原因には確定的な診断方法や治療法はなく、肩こりは腰痛などと並んで不明な点がとても多い疾患となっています。
同じ姿勢を続けるなどして頭や腕を支える(1)僧帽筋やその周辺の(2)肩甲挙筋・(3)上後鋸筋・(4)菱形筋群・(5)板状筋・(6)脊柱起立筋・(7)棘上筋などの持続的緊張によって筋肉が硬くなり、局所に循環障害が起こります。
それによって酸素や栄養分が末端まで届かず、疲労物質が蓄積し項頸部から僧帽筋エリアの諸筋に『詰まったような、こわばった感じや不快感・こり感・重苦しさや痛み』などの症状がでます。
また肩こりがおこる原因の一つとして、「心因性のストレス」も考えられます。日常生活で悩みや不安・怒りを感じるとき、人一倍責任感が強く真面目で几帳面な性格の方、精神的緊張状態が続く方、内向的な性格の方、うつ病の方などが肩こりになります。
肩こりの重苦しさを放置すると痛みを感じるようになり「頚まで痛い」「凝りすぎて背中が痛くて眠れない」などの、自覚症状が生じます。進行すると緊張性頭痛や顔面と上肢にも関連痛が生じるようになります。
肩こり対処法
慢性の肩こりの原因としてここ数年でデスクワーク(特にパソコン業務)が上位に挙げられています。これは図1に示すような座り方に起因すると考えられます。
- イスに浅く座り、腰が丸まっている。
- あごを突き出すようにパソコンの画面(モニター)を見ている。
- パソコンの画面または資料などが身体の正面になく、首もしくは身体を捻った状態でいる。
そこで会社や自分で行える肩こり軽減のやり方をご紹介いたします。
肩こりのストレッチ
肩こりのストレッチのポイント
- 15秒~30秒かけてゆっくりと伸ばす
※15秒~30秒が、筋肉が一番リラックスする秒数と言われています。 - 戻す時は伸ばした秒数に5秒プラスして更にゆっくりと戻す。
※せっかく伸ばした筋肉を急に戻したら逆に痛める原因になってしまいます。 - ストレッチは必ず深呼吸しながら、ゆったりとした気持ちで行うようにしてください。
※筋肉は息を吐くとき緩みやすくなります。
肩こりの原因となる筋肉
1. 僧帽筋(そうぼうきん)
【 働き 】
- 上部…肩甲骨を後退、拳上、上方回旋する。
- 中部…肩甲骨を後退する。
- 下部…肩甲骨を後退、下制、下方回旋する。
僧帽筋は後頭部から下部の胸椎までの広い範囲から始まり、肩甲骨周辺にかけて大きな三角形を作っていますので、肩甲骨の動きと深い関係があります。
この筋肉は、上部、中部、下部の繊維に分類され、それぞれの働きは違っています。後退とは、肩甲骨が脊椎の方向に移動することを指します。
また、後方から見て右肩甲骨ならば上方回旋が時計回りで、下方回旋が時計回りとなります。左の肩甲骨はこの逆となります。僧帽筋が、全体的に緊張すると、肩甲骨を肋骨に安定し、重いものを持ったりすることが出来るように働きます。
2. 肩甲挙筋(けんこうきょきん)
【 働き 】 肩甲骨を引き上げる 。
肩甲挙筋は文字通りで、肩甲骨を上方に引く働きをします。この動きは肩をすくめる動作です。また、上位の頸椎の横突起に付着している為、筋肉の走行は斜め内方です。したがってこの筋肉は、肩甲骨を上方に引くことと同時に内方へ引きます。
【日常生活で肩甲挙筋が使われる主な動作】
- 寒くて肩をすくめる動作
- 重いコートを着ると肩が下がらないように肩を挙げる動作
- ショルダーバッグを肩にかけたときずり落ちないようにする動作
- 耳と肩で電話を挟んで話すときの動作
※特に女性の方は筋肉(肩甲挙筋)が弱いためにこりが起こりやすく、首を後ろに倒した時に痛みとして現われる所です。
3. 上後鋸筋(じょうごきょきん)
【 働き 】 肋骨持ち上げて、呼吸を助けます。
吸気時に上部肋骨をひきあげ、胸郭を広げる作用があります。 重度の肩こりの方は、菱形筋や肩甲挙筋の筋膜と上後鋸筋の筋膜がひっついたように硬くなって、ほとんど動きを失ってしまいます。
4. 菱形筋群(りょうけいきんぐん)
【 働き 】 肩甲骨を後ろに引く作用があります。
不良姿勢などによる肩こりでは、この筋にも不快感・重圧感・こり感や痛みを感じることがあります。
猫背姿勢の人やデスクワークで長時間パソコンに向かって仕事をしている人は、よく背中(肩甲骨の内側)が痛むことがあります。その原因の一つとして、腕を前方に伸ばしていることなどで肩甲骨が前方に引っ張られ続けることにより、 この菱形筋(りょうけいきん)が伸びたまま固くなってしまうことが考えられます。
5. 板状筋(ばんじょうきん)
【 働き 】 頭を後屈(頚の伸展)させ、片側のみが働くとそちらに側屈、回旋します。
板状筋は他の背筋(最長筋、頭半棘筋)と協力して頭が重力で前方に傾かないよう保持します。つまり一連の脊椎の生理的な動きをスムーズにこなすように手助けをします。この筋が、こり固まると頚・肩に痛みが生じます。
6. 脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)
【 働き 】 腸肋筋、最長筋、棘筋からなる3筋で協同して働きます。
脊柱を伸展して屈曲を防ぎ脊柱を起立させます。片側のみが働くと側屈、回旋します。とくに斜走する筋群は腹壁の筋とともに働かせて回旋します。
7. 棘上筋(きょくじょうきん)
【 働き 】 下垂した上腕の外転を開始する際に働きます。
回旋筋(棘上筋、肩甲下筋、棘下筋、小円筋)の1つでサポートします。棘上筋は、肩が抜けないよう(肩脱臼)上腕を引き付け、安定化させる働きがあります。力を入れずに腕をだらりと垂らした時(安静下垂時)にも、この棘上筋のみが常に肩関節安定のために緊張しています。